採用をする側にも「ノルマ」があるという事を知っていましたか?そこに隠された大きな流れを知る事は、面接を有利に進める武器になる!という事で今回も、面接の神にお聞きしました!
<聞き手:合説どっとこむマガジン副編集長 古江健二>
古江 では、よろしくお願いいたします。
兵頭さん よろしくお願いします。

古江 今回のテーマはですね、採用担当も実は『ノルマ』に追われていると。これぱっと聞くと、『え、採用する側にノルマがあるの?』って言う、僕すごい不思議に思ったんですけど、これは実際どうなんでしょう。
兵頭さん ノルマはあります。
兵頭さん かつて私が新卒採用担当をしていた会社の例です。そこでは新卒を、大卒を年間100人採用するわけです。まずこの人数をクリアしなければいけないというノルマがあります。また質のいい人材を採用できたのかどうかということにおいて、それを客観的に示す指標は応募倍率がより高いことでしかありません。したがってエントリーはどのくらいあったのか、何人の学生が会社説明会に来たのか、この数字も採用担当によってはノルマのようなものなのです。
古江 そうなんですね!
新卒採用広報予算は年間3億円、失敗は許されない
兵頭さん 私が新卒採用責任者をしていた別の会社の例では年間の大卒採用目標人数がなんと600人。そのための広報予算は3億円でした。採用担当の人件費以外の採用広報と会場代とか合計するとなんだかんだ年間3億円かかるんですよ。だから、その予算を使って採用広報して、会社説明会の動員数が目標なんですよね。
兵頭さん 3億円のほとんどは会社説明会に学生を集客するための広報費と会場費です。会社説明会の年間の動員目標を5000人と設定し、3億円の予算をいただいたわけですから、動員目標が未達だと会社に無駄なお金を多額に使わせてしまうことになるわけです。
説明会動員目標が未達だと目標採用人数の未達につながってしまいます。そんな中で、目標採用人数に無理に調達しようとすると、選考のレベル下げるしかないんで、採用担当としては失敗じゃないですか。
古江 そうですよね!
兵頭さん 採用目標が600人であれば応募者は5000人であろうが3000人であろうが600人をとらないといけないわけです。社員が足りなければ仕事も回らなくなりますからね。
古江 ほー!!
兵頭さん 年間の新卒採用人数が一けた台の会社だったら、好きなタイミングで採用すればいい。しかし、100人採用する会社が70人しか採用できないと、30人を中途採用で埋める事になります。そこに莫大な手間とコストがかかるんですよね。負の連鎖が始まります。

古江 負の連鎖…。
毎年約10%の社員が退社する想定で採用している
兵頭さん 実際、成長してない会社でも100人とか採用するんですよ。ある会社で2000人社員がいるとしますよね。どんなに離職率に問題がない会社でも1年で10%は辞めるんです。家庭の事情とか病気や事故で亡くなってしまう人とかね。
古江 そうなんですね!
兵頭さん 離職率が5%程度の会社はかなり良い会社です。それでも5%です。2000人でも100人辞める。会社が成長していなくても100人毎年取らないと、2000人が維持できなくなります。
古江 確かに・・・
兵頭さん だから数千人って会社は自然退職の補充だけで、毎年100人以上採用するはずなんですよね。そうじゃないと会社が小さくなってしまうんで、何がなんでも採ります。

古江 何がなんでも・・・
兵頭さん 大企業だったら、毎年5%から10%が退職します。実は私は人事部時代、全退職者の200人の退職理由とか、退職願に目を通してたんです。
古江 全部ですか!?すごっ!その退職理由に違和感とかってあったりするんですか?
兵頭さん 退職率が10%程度の会社の退職理由は会社に問題があると感じられるような違和感はありません。これが20%とかになると会社に問題がある退職理由が多く含まれてくるのだと思います。2000人のうちの200人って。でも、400人やめたら会社に問題があるケースが考えられますね。
古江 採用担当のノルマって結構大変そうですね。どんなノルマがあるんですか?
神様も感じた大博打のプレッシャー
兵頭さん 私が新卒採用責任者をしていた会社ではその重要な数値目標は3つでした。
①会社説明会動員数、②内定者数(内定辞退者も多いのでこの数字は採用人数の2倍、3倍になる)、③採用(入社)人数です。
古江 とてつもないノルマですね。
兵頭さん 会社によっては凄いイレギュラーなそのミッションもなかなか重たいプレッシャーでした。

兵頭さん 採用目標人数を一人も超過してはいけないというミッションです。
古江 なるほど!
兵頭さん 毎年、大博打だったですよね、(笑)
ヤバイ、採用目標が100人なのに105人入社承諾書出して来ちゃったってなったら、これはこれでまずいですよね。でも100人採用するには200人とか300人内定出さないとないといけないわけです。学生さんて平均で3社内定とるから、2社辞退するわけですよね。逆算すると我々は300人内定出して初めて100人が取れるわけです。すごい博打だったですよね。
古江 博打!確かに!笑
兵頭さん 別のある会社では逆パターンでした。100人に対して、120人130人とっていいよとっていう。これは成長企業ですね。成長している会社は多めに採用する分には問題ないと。ただそれだと、逆に取れなかった時に、兵頭の仕事がダメだったって話で終わっちゃいますから。

古江 採用担当の方もノルマがあって面接に挑んでるわけなんですね。
面接官は内定辞退されるのが一番怖い
兵頭さん まあ、就活生の方にアドバイスなんですが、1人採用することは、つまり票読みと一緒なんですよ。だから、第一志望ですっていってそれが信用されたら、合格の可能性がすごくあがるんです。
古江 なるほど!そうなんですね。そしたら、ノルマを逆手にとった面接の仕方なんかができるという。
兵頭さん 全然できるって事です。だから第一志望ってほんと強いって事なんです。ほんとに第一志望って子は合格基準より少し下でも普通に合格出しますよ。確実な1票欲しいですもん。

古江 そうなんですね!いかに第一志望でってアピールできるかという事ですね。
兵頭さん まあ、実際、100人ぐらいとった時に、合格基準より低いのが、2、30人紛れていても、わからないんですよね〜〜(笑)
古江 言っちゃった(笑)
兵頭さん みんな、ノルマを達成することだ大事な時もあるのでこれくらいの小賢しい技は普通やりますよ。それで、入社式で壇上に立つ社長が100人をみた時に、今年レベル低いなあの20人はとかって思わないですよ。(笑)
古江 確かに(笑)!
兵頭さん 本当に優秀だったのかってことは2、30年後とか先なんで、笑。頭のいい人事ほど、そういうずる賢いことやると思いますよ。
古江 そうなんですね(笑)そういうカラクリが・・・
兵頭さん すいません。私もそういうことやってました(笑)今だから言える話ですけどね。

現場を知ってる人は早期退職しないと思われる
兵頭さん 確実に合格を出したくなる学生でいうと、アルバイト経験者は間違いなく合格率高いです。なぜかっていうと、現場の泥臭さを知っているからなんですよ。
古江 仕事がスムーズに進むからですか?
兵頭さん 違います!仕事のやり方は研修でどうとでもなりますが、現場を知っている分、理想と現実のギャップで「なんかこの会社違うわ」といったような早期退職リスクが少ないからです。
古江 あー!なるほど!それは確かにあるなー。
兵頭さん 現場のリアルな部分を知らないと、会社説明会とかで「あなた達は幹部候補生ですよ〜」みたいな甘い言葉に踊らせて入社します。ところが現場に配属されると40歳過ぎても全然出世していない大卒とか、会社の厳しさを目の当たりにします。同じ幹部候補で入社したはずなのに、このままじゃまずい!となって退職してしまうケースですね。
古江 確かに新卒の3割がすぐに辞める時代ですもんね。
兵頭さん だけど、アルバイト経験者はすでにその現実を知っています。それが一番大きな理由です。採用担当が一番避けたいのは、早期退職と内定辞退。これが一番ダメージを負うので。
古江 僕が人事なら心臓バクバクです。
兵頭さん 恋愛に例えてみてください。婚約破棄と成田離婚は嫌でしょ?それと一緒ですから(笑)
古江 ショックで立ち直れないですからね。(恋愛ネタ好きだなぁ)
兵頭さん 内定辞退は婚約破棄、早期退職は成田離婚・・(笑)

古江 そんな感じなんですね(笑)では、いい感じでシメていただきましたので、今日はここまでということで。ありがとうございました!
兵頭さん ありがとうございました。

